カーボンニュートラルにおける、本当の脱炭素とは

最近、SDGs関連のワードを良く見かける。そもそもSDGsとは、持続可能な開発を目標とし17の世界的目標・169の達成基準・232の指標を持つ持続可能な開発目標 であり、 2015年9月の国連総会において採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』」と題する成果文書に記述されている2030年までの具体的指針のことを指している。しかしながら世界は直ぐに変化することはなく、日本の場合2020年10月に政府が宣言した「2050年カーボンニュートラル」が発端で、このSDGsが再浮上したイメージが強い。

 

さて、そのカーボンニュートラルだが、皆さんはどう理解されているのだろうか。「脱炭素」「CO2排出量を0にする」など、色んなフレーズを耳にするが、実のところカーボン、つまり二酸化炭素の排出量を0にするまでを望んでいる概念ではない。そもそもカーボンニュートラルの定義は、カーボンの排出が「実質0」の状態であり、カーボンの排出量がマイナス(何かで吸収される場合)であれば、それはカーボンニュートラルでなく、カーボンポジティブやカーボンネガティブと呼んだりする。カーボンの排出が「実質0」の状態とは、排出した分を吸収し「排出ー吸収=0」の状態であれば、それはカーボンニュートラルと言える状態なのだ。

 

現在、企業はそのカーボンニュートラルに向けて、それこそ「脱炭素」を目標に経営の舵を切っている。例えば、同業他社による共同物流網の構築で空車など輸送面の効率化を上げる、トラック輸送をモーダルシフトへ変えることでCO2の排出量を抑える、また燃料などのエネルギーを再生可能エネルギーにすることやLNGアンモニアなどに変えることを実施、または計画している。

 

しかしながら、その対策の中には脱炭素として曖昧な内容もあるだろう。例えば、アンモニアをエネルギーとして使用することである。アンモニアをエネルギーとして利用する見方となったのは、経済産業省が2021年2月に「燃料アンモニア導入官民協議会」を通じ、「2050年に3000万トンのアンモニア導入目標」を掲げたことが大きいだろう。その結果、商社や物流企業がアンモニアに着手したニュースを目にするようになった。しかし、アンモニアは果たしてグリーンなエネルギーなのか。調べてみると、どうやらアンモニアをエネルギーとして使用できるまでには、大量の電力が必要であり、またアンモニアを燃やすと窒素酸化物が発生し、このうち一酸化二窒素(N2O)は温室効果ガスとして位置しており、環境負荷が大きいとも言えるらしい。以上の点を考慮すると、エネルギーの代替品とは言いにくいだろう。。。

 

今回説明したアンモニア発電の最大な利点は、燃焼してもCO2を出さないことにある。つまり、エネルギーとして利用する視点は良いが、技術が伴っていない状況だと推測する。その技術課題について、先日とある海運企業はアンモニウム生成技術を主に研究しているベンチャー企業へ出資を発表している記事を見かけた。影響の大きい大企業が率先して動き、技術の開発など現状の課題解決に向けた早めの活動は、他の企業もどんどん実施すべきだと思う。 まずは技術という足元を固め、環境に優しいエネルギーが普及してくれることを願う。

 

少ししっくりこないが、本当の脱炭素とはカーボンニュートラルに対する現状の課題解決のために、企業や個人がどう動いたかの「活動」そのものなのかもしれない。